証言・自分が変わる社会が変わる
ハンセン病克服の記録
第二集

藤田 真一 編著 / 四六判上製 484頁 /
税込2625円 / ISBN4-89007-115-6 C0036 

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 「 迷える一匹の子羊であった森元君が、今夜、自分のもとに帰ってきた。有能な羊飼いなら、迷える  子羊を探しに行っただろうが、ズボラな教師だった私は、その一匹を探し出そうとしなかった
   ハンセン病患者だった森元美代治さんの記録第二集『証言・自分が変わる 社会を変える』に紹介されている、森元さんの慶応大学時代のゼミの指導教授内池慶四郎さんの言葉。」
  「朝日新聞」

「遺伝する、うつる、治らない──三大偏見は消えたのか。たまたま復帰を果たした森元美代治・美恵子夫妻の身内や地域社会との相克、訴えが、証言、資料を交えて入念に語られる。」
   「東京新聞」 

らい予防法の廃止によって、ハンセン病は、特別な予防対策をなんら必要としない、ふつうの感染症のひとつとなりました。

その感染者、または発病者と分かってもたいてい、自宅から医療機関への通院加療で済みます。そういう時代に変わったのです。

そこで、政府の患者隔離政策による、過ちの総括まですべて終わったんだ、と早のみ込みした人びとが多いようです。じつは、そうではありません。過ちの本格的究明は、ようやく始まったばかりなのです。」
はじめに より

 

証言・自分が変わる 社会を変える ハンセン病克服の記録第二集 

もくじ

はじめに―らい予防法廃止から三年半


第一部 実名証言―カミングアウトで「人間回復」つかむ


第一章 私の身に起こったこと……森元美代治は語る

  われわれ患者・回復者の側が沈黙したまま、なんの行動も起こさず、偏見や差別の根強い日本社会に、多くを期待することはできない。だから私は、われわれ自身がまず変わる、そこで社会も変わるんだと信じて、価値ある人生にしていこうと思う。

    第一節 国連の夕食会でスピーチ
    第二節 慶応大学のゼミ仲間と再会
    第三節 夫婦TV『徹子の部屋』出演
    第四節 マスコミの「タブー」扱い解禁
    第五節 故郷での講演会 親族から反対の声
    第六節 温かく迎えてくれた故郷の人たち


第二章 結婚・両家で迎え入れられた私……森元美恵子は語る
    第一節 カミングアウトして楽になった
    第二節 夫の両親に初対面のあいさつ
    第三節 偏見持たない米国の叔母夫妻を訪問
    第四節 父の家族・親戚は良き理解者



第三章 これからどう生きていくか……森元美代治は語る
    第一節 変わり始めた入所者たち
    第二節 社会が変わる
    第三節 社会復帰を考える



第四章 国際活動―IDEAと私の役割……森元美代治は語る

  まだ、ハンセン病問題は終わっていないんじゃないですか。ブラジル、中国、インドなど、実際には、まだまだ厳しいです。
  WHOの公式統計では、世界にはまだ一千万人以上の患者がいる、ということです。その人たちが病んで痛んでいるのに、日本の中では、もうハンセン病は終わったと言われている。こういうことで済ませてよいものでしょうか。

    第一節 ニューヨークの四日間
    第二節 アメリカ本土唯一の療養所訪問
    第三節 中国訪問で得たもの



第五章 国家賠償請求裁判迷いに迷って参加……森元美代治は語る

  最終的に私が決心したのは、われわれ元患者、そして家族の名誉回復を最大の目的として、この裁判をやらなければならない、と思ったからです。いまの国の対応の仕方にしても納得できないし、国民全般もハンセン病についてあまりにも知らなさすぎる。自分には関係ないこととしてずーっときている。
  そういうものが結局、今日のいろいろな偏見・差別を生んだ原因じゃないのか。ハンセン病患者・回復者、在日、HIV、被差別部落、アイヌの人たちなど、いろんな差別があります。これには共通している部分がありますから、そういう人たちのためにも、私たちは立ちあがらなければいけないんじゃないか。

    第一節 国賠請求裁判は『人間回復裁判』だ
    第二節 なぜ「一人一億円」請求なのか



参考資料 「らい予防法」違憲・国家賠償請求の訴訟とは
参考資料 ハンセン病差別被害救済・国家賠償請求事件の要点
参考資料 政治的責任認めても国家賠償責任には結びつかず


〈Q&A〉日本のハンセン病が終わるとき
……森元さんの主治医・並里まさ子氏に聞く
    1 患者とは? 回復者とは?
    2 ハンセン病終焉に向かう日本の問題点
    3 日本の力量を国際協力で生かそう

〈記録〉ボランティアが見たハンセン病の世界……村上絢子
    1 森元夫妻と歩いた三年半
    2 美恵子さんのご尊父の葬儀に列席
    3 IDEAの国際活動に参加して
    4 北京国際会議 アンケートの回答から

ドキュメント―森元夫妻の三年半

第二部 ハンセン病行政責任者は証言する

人権より「患者撲滅」を優先した過ち
……藤楓協会理事長・国際医療福祉大学学長 大谷藤郎さんに聞く

  ハンセン病問題の根本課題と私が考えているのは、弱者の立場に置かれた人に対して、一般普通の人までが忌避するばかりか、迫害状態にまでエスカレートさせたこと、なぜそうなったのか、それは社会のだれの責任なのか。その責任をどのようなかたちでとったのか、とるのか。将来的に、このような間違いの発生をどのようにして克服するのか、ということが解決していない。そればかりか、本格的な取り組みもなされていないことです。

    第一章 人として・医師として・元官僚として
    第二章 らい予防法廃止へ 私の原点
    第三章 国立療養所課長の仕事
    第四章 らい予防法は明らかに人権侵害だ


らい予防法廃止の舞台裏……厚生省の元担当係長 長田浩志さんに聞く

    第一章 こうして決まった「らい予防法」廃止
    第二章 廃止新法は本邦初公開
    第三章 国家補償=処遇の維持継続
    第四章 入所者とふつうに付き合う

 

第三部 社会をどう変えていくか  藤田真一

  以上、二紙の記事を合わせ読むと、管さんの発言の重要性がよくわかります。つまり国が法律の力で八十九年間にわたって、ハンセン病患者の人権をふみにじった「過ち」について、公的償いをすべきや否や、まともに論じ合う場として、裁判という手段があってもよいのではないか、との考え方です。私も、この意見に賛成するひとりです。
  なぜかというと現状では、国民の大半が、ハンセン病の予防政策にかんして、国がどんな過ちを犯してきたか、あまりにも知らなさすぎるからです。裁判の場を、国民全体に対する、またとない社会教育の教室と考え、ぜひ活かしていただきたいものです。

第一章 差別社会とジャーナリズム
第二章 カオの見えない国賠裁判

資料編―偏見を改め、正しい常識を普及するために

感染症―撲滅から共生の21世紀へ
    資料1 不治の感染症が世界じゅうに広がる
    資料2 病原体と共存しつつ追いつめる


現時点でのハンセン病に対する公的見解
    資料3 ハンセン病 正しい常識七カ条
    資料4 ハンセン病の正しい知識(医療と対策の歴史)
    資料5 国の法律が患者・家族を苦しめてきた


ハンセン病対策史を資料で読む
    資料6 ハンセン病「治る時代」を「不治の時代」の頭で論ずるな
    資料7 ハンセン病医学はどう進歩してきたか
    資料8 癩病トハ、予防モ治療モデキル病気デアル
    資料9 浮浪ライは文明国の恥
    資料10 「治る時代」になお半世紀、なぜ患者隔離が続いたのか
    資料11 私は社会をらいから守る防波堤
    資料12 らいは遺伝か伝染か
    資料13 らいの発生原因は貧困だ
    資料14 日本とノルウェーの患者隔離法は根本が違う



あとがき
取材・執筆の参考にした図書一覧
あんない―高松宮記念ハンセン病資料館/ちばりよ会

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