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内容と特徴

 

『《ススルタ》大医典』はインド3大医書(「チャラカ本集」「八科神髄集」と並ぶ)の原典の一つであり、古代インド外科学の最高傑作といわれ、著作は紀元前2〜3世紀頃といわれている。

『《ススルタ》大医典』は、6編186章、詩数約8300から構成されており、「チャラカ本集」にはない「補遺編」がある。ダンヴァンタリの弟子「ススルタ」により著作されたこの詩頌は韻文と散文の混合体で書かれ、特に「外科的治療法」に卓越しているのが特長である。病気には外科的治療によって治るものと、油剤などの薬物により治るものの2種類があり、外科的治療の適応疾患に油剤などの薬物を使用することは可能であるが、薬物治療の適応疾患に外科的治療は行えないとしている(総論編24章)。

各編を通じ、診断、治療、臨床実践などにおいて外科治療を中心に扱っている。

「総論編」では外科治療用器具の種類、使用法を具体的に記述し、腐食剤(アルカリ剤)、焼灼法、ヒル使用など、外科治療に準じる治療法の知識―特に傷、化膿傷の処置法が詳述されている。

「毒物編」には、有毒動植物、有毒飲食物による中毒に対する検査法、解毒法の知識が述べられている。

「補遺編」には、眼、耳、鼻の疾患、小児疾患のほか、治療編で扱わなかったその他の疾患、精神性疾患、鬼神性疾患などの診断と治療法が述べられている。

人体解剖学の祖―世界で初めて人間の死体を解剖した医師が「ススルタ」とされている。古代インドではすでに紀元前5〜6世紀頃には解剖学の知識があった。また、古代インドの外科学では人体の構造についての詳細な知識があった。ススルタは人体の部位、組織(皮膚の構造、粘膜、骨、筋肉、関節、腱、靭帯、静脈、動脈など)を数量的に観察し、詳細に記述している。解剖学的構造には現代医学の知識と比較すれば正確さに欠けるが、多くの点で西洋近代医学の所見に近い類似点が見いだされる。

外科の知識と治療に卓越―また、弟子たちに外科手技を実演・指導を行なった最初の外科医である。この知識は「外科的創傷」の治療の章で詳しく解説されている。ススルタは8種類の手術手技の知識と実際の手技を示し、これらの技法は今日の手術に組み入れられている。

特殊な外科治療の知識を解説―手術のリスクを避けるために腐食剤治療、焼灼治療、瀉血治療の知識を記述。痔核、痔瘻、泌尿器結石、死亡胎児の摘出術、骨折、眼疾患、腸閉塞などの外科的治療を記述している。

外科的治療器具を解説―外科的治療に使用する治療用器具を開発し、その使い方、器具の長所、短所などの知識を解説し、鈍器具、鋭器具、付属器具などその形状、材質、使用目的などの知識を記述している。

戦場医学の知識を記述―特に外部から身体内に侵入した異物除去(弓、矢、破片、棘、鉄、竹、化学毒物、腐敗食物、有毒動物、鳥、昆虫類の噛咬刺毒の解毒治療など)の知識を解説している。

形成外科知識と実際を記述―とりわけ造鼻術、耳、唇などの形成術、整形術の実際を示している。

総合的な観察と分析により疾病分類を記述―治療を行う6つの時期は、西洋医学にない斬新な考え方を示し、解説している。