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「生」の受け継ぎの書

都留市立病院 名誉院長
元・東京大学医学部付属病院分院長

大原 毅

4000年前の医学の古典に接する機会があろうとは思ってもいなかった。1050ページにおよぶ本書は、「全生命の科学」ともいわれるほどの膨大な知恵に満ちている。これほど昔から人間の歴史の中に医学が根づいて、人間と一緒に生き、しかも現代につながっていることに驚愕した。

将来、医学の診断治療技術はきわまりなく進歩するであろうが、人間の心だけは未来永劫変わらないはずである。そこをいちばん教えてくれるものではないかと思われてならない。

疾病を4大別してあり、特に治療学、なかでも手術の科学の最重要性を述べている。この分野では200にわたる手術器具、8種の手術手技(切採、切開、擦過、穿刺、探索、摘出、液分泌、縫合)、縫合法では丸針、角針の使い分け、腸線の利用法、適切な針刺入部位があげられ、火傷の記載は現在とまったく同じ第1度から第4度のしっかりとした把握がなされている。

そこには経験医学であるからこその、実に詳細な観察がなされ非常に参考になる。さらに、「開業に必要な医師の資格」や「医師を正しく尊敬すれば治癒は快速である」など現代にも通ずる哲学もある。

人類の「生」の受け継ぎの書という感想をもっとも強く持った。その意味では古典ではなく、現在の、また将来の書物という感じもする。この点が現代に資する最大の贈り物ではないか―。